この世にこんなに面白い仏教解説書はありません!!!雲にのる 須弥山の頂編 (プラチナコミックス)作者: 本宮ひろ志出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/04メディア: コミック購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (2件) を見る


本宮ひろ志先生の隠れた名作、「雲にのる」を紹介します。
とにかく読んでください!めちゃくちゃ面白いです。
私の拙い文章で、この面白さを伝えるのがもどかしいです。


本宮ひろ志先生は、週刊少年ジャンプの設立時代から所属し、ジャンプの発展に大きく貢献した先生です。代表作、大ヒット作はいくつもありますが、メジャーデビュー大ヒット作の「男一匹ガキ大将」、痛快エンタテイメント大ヒット作品「俺の空」、そして説明不要の大ヒット青年漫画サラリーマン金太郎」の作者です。(「サラリーマン金太郎」はこのBlogで紹介しているので、良かったら読んでみてください。http://d.hatena.ne.jp/tao8/20061113
聖闘士星矢」等で有名な車田正美先生は、ジャンプ先輩にあたる本宮先生の影響をかなり受けていたようで、大きなコマわり、でっかいキメ台詞等、本宮漫画の精神を受け継いでおります。
また、「東京大学物語」等で有名な江川達也先生は、数学の先生を辞め、漫画家を志すにあたって、最初に本宮先生のアシスタントを経験しました。絵柄もストーリー構成も違うのに、なぜ、本宮先生に弟子入りしたか?それは本宮プロが最も人気漫画を出して、人気漫画家を輩出していたからだそうです。


さて、この作品は、仏教を綿密に研究した上で本宮先生が大胆に解釈した作品です。
同じく仏教、特に仏陀の人生をテーマにした大長編作品として手塚治虫先生の「ブッダ」。西洋の神と悪魔の戦いを強烈に描いた永井豪先生の「デビルマン」があります。(「デビルマン」はこのBlogで紹介しているので宜しければご参考にしてください。http://d.hatena.ne.jp/tao8/20070402
どれも「神様」をテーマにしており、どの作品も珠玉の名作になっております。


上記どれも珠玉の名作ぞろいの作品ですが、この「雲にのる」は本宮先生ならではのエンタテイメント性を追求しています。わくわくる男(天)たちとの戦い(バイオレンス)、天女たちとのSEX(エロティシズム)を次々と描いて、男性読者にはたまらないものがあるでしょう。
大長編でシリアスな「ブッダ」と、エンタテイメント性盛りだくさんで中編(モーニングKCで全6巻)は両先生の方向性の違いが汲み取れて興味深いです。


その方向性の違いを如実に示した一つの台詞が端的にあります。それは「雲にのる」(モーニングKC版)第5巻110ページです。


・・・引用・・・
仏陀※1は説法※2により仏の森羅万象※3を立証するが、転輪聖王※4は力によって仏の森羅万象を守る・・・」


※1仏陀(ぶっだ) 仏の真理を会得し(解脱)、永遠の虚無にいる存在。仏とは仏教にとって最も高い位にいる存在。
※2説法(せっぽう) 仏の教えを人に教えること
※3森羅万象(しんらばんしょう) 宇宙全体の法則
※4転輪聖王(てんりんじょうおう) 仏陀は人々へ仏の教えを伝えたのに対し、転輪聖王は力によって世界を征服し、理想の天下国家を築く仏の王。
仏陀によって目覚め、転輪聖王の出現により完成する。転輪聖王は新しい宇宙法則(曼荼羅)の中心に位置する。

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手塚治虫先生は仏陀の人生を描き、仏陀が生涯インドの様々な場所で説法を通じて仏の教えを伝えたことに対し、本宮ひろ志先生は、転輪聖王という密教からの”力の仏”になる過程を描いております。


ズバリこの漫画は、密教を本当にわかりやすく私たちに教えてくれる現代の宝物(ほうもつ)です!
実際京都にある有名なお寺では、弟子にこの漫画を教材にしている実績があります。
もったいないくらいの名作です。ぜひ読んでください。
目から鱗が落ちますよ!