孤高の戦闘機傭兵パイロットの、激動の人生ドラマ

もう一人のメカ漫画を描かせたら右に出るものがいない作家は新谷かおる先生です。


新谷かおる先生は、大和和紀山岸凉子、そして松本零士先生のアシスタントを勤めた後独立しました。2人の女性作家のおかげで少年漫画には珍しい線の細い、少女漫画チックな人物描写が特徴です。またメカニックな部分に関しては松本零士先生より受け継がれ、メカが生き物のように感じる躍動感のある描写も特徴です。


新谷かおる先生の最大のヒット作はこの「エリア88」です。
民間航空のパイロット候補生、風間真(かざま・しん)は、社長の娘の心を射止め、結婚まで決めたが為に、嫉妬に狂う孤児院からの幼馴染であった親友神崎の策略によって、中東の地、内戦中のアスラン王国の傭兵部隊へ送り込まれる。除隊するには契約満了まで生き延びるか高額の違約金を払うかのみ。日本へ生還するのが目的とはいえ、戦闘機乗りとして敵戦闘機撃墜、敵基地攻撃によって得られる報奨金を稼ぐ傭兵稼業に染まっていく心中の矛盾・・・苦悩する主人公の生死を賭けた戦いを描く戦争漫画である。


空軍基地エリア88 の一癖ある食えない傭兵たちが交わす、ニヒルでそれでいて哀愁の漂う名セリフに彩られた独特の魅力を持つ作品。(Wikiより引用)


物語は一介のパイロットでしかなかった主人公が運命に翻弄され、親友であった宿敵・神崎との戦いに向かう。また、主人公風間真とヒロイン津雲涼子(つぐも りょうこ)との恋の行方も楽しみな作品です。


中東、日本、ヨーロッパ、アフリカと、ものすごい大風呂敷を広げた作品ですが、テンションを最後まで維持し、きちんと最後に物語を収束したのは素晴らしいです。最後まではらはらどきどきで飽きません。ちょっとリアリティがありそうな感じもあるんじゃないの?というところもいいです。


私が個人的に気に入っているシーンは、主人公が除隊してずっと憧れていた平和な生活に戻ったらノイローゼになるところです。いつでも神経をピリピリして警報やサイレン、飛行機の音がないと安眠ができない身体になる。酒におぼれる主人公・・・「どうせ俺の血は汚れちまったんだ。もう恋人を抱くには穢れすぎちまってる」と言う主人公が切ないです。


日本だけじゃ世界のモノサシははかれない。人間のえげつなさを語ってくれる作品だと思います。